テキストマイニングの手法

テキストマイニングが実現する知的生産性の向上

 (図1-17:CRMとナレッジマネジメント)に、CRMとKM及び両者の主要なターゲットである顧客情報との関連を示す。 これまでの議論から、CRMとKM活動のは共に顧客情報であり、「顧客の生の声」を如何に的確かつ迅速に経営に反映するかが、 多くのの業種において共通のテーマとなりつつある事が理解できると思われる。勿論、企業には様々な情報が関連し合っており、 個別の専門技術情報の様にCRMとは無関係であったり、製品情報の様にKMとは関連が薄い情報も存在してはいるが、結局の所それらは枝葉(即ち、部門レベル)の問題であり、 経営のトップ課題には成り得ないものであろうと考えられる。
 これまで述べてきた点を要約すれば、データから情報への転換を促進するナレッジマネジメント活動は、 情報量の大きさと緊急性から「顧客情報」が主要ターゲットとなり、「顧客情報」のナレッジマネジメント活動は、 “顧客の声”への迅速かつ的確な対応を目指すCRM活動の中核となるものである。また、こうした活動を迅速に支援するのがテキストマイニング技術であり、 これなしには大量のデータも手づかず状態となってしまうことから、今後はこうした活動を支える新たな能力、 リテラシーとして「マイニング能力」への要請が明確化してくるであろうと予想される。
 実際、数値情報に関しては、従来からさまざまな理論づけと支援ツールが整備されており、 我々はそれを自在に使いこなして大量のデータを処理できる環境にあるが、テキスト情報に関してはまったく貧弱であり、 僅かにワープロと表計算機能が存在するだけであった。このため、我々はひたすら文書を読むことしか方法がなかったのであったが、 テキストマイニングの実用化により状況は大きく変化し、自動分類機能や分析結果のビジュアル表示を通じて、 大量のテキスト情報に眠る新たな視点の発掘や発見・発想の支援が可能となっている。 この意味で、まだまだインテリジェンスの程度は低いものの、テキスト情報を仲介として人間とコンピュータが強調作業をする道を切り拓いた技術として、 幅広い将来展開が期待されている。
 これまでにも数値情報からは抽出できない「顧客の言動や挙動」を直接捉える手段として、文書情報が大きな貢献を果たすと言う理念はあったが、 それを実用的な範囲(データ収集、分析時間、分析能力など)で実現する方法論が存在しなかったのであり、 Web環境の充実とテキストマイニングの出現により新たな展開が図られたものである。
 テキストマイニングの基本技術は米国産であるが、顧客指向を徹底する日本の経営風土に育まれて発展したものであり、 現在はまさに進化の途上にあって日々新たな機能が展開されている。この点で、テキストマイニングは日本型顧客指向経営の基幹技術として、 世界に発信できる可能性が高いと考えている。

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(2019.05.08 公開)

本コラムは、2002年リックテレコム社出版 石井哲著作「テキストマイニング活用法 顧客志向経営を実現する」から引用しています。
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