テキストマイニングの手法

顧客サービス戦略の転換:「顧客サービス戦略本部」へ

 先に、顧客の囲い込みを実現する上で、顧客サービスが極めて重要である事を述べたが、これをさらに押し進めて、「攻めの顧客サービス」を実現すべく「顧客サービス戦略本部」を提案したい。
 まず、従来の顧客サービス体制の問題点を、図2-5(顧客サービスの改善)に示す。これは、大手企業における顧客との接点をモデル化したものであるが、事業領域の多様化と顧客接点の多様化に伴なって、顧客と企業間で交わされる情報とその担当部門が複雑に入り組んでおり、全体としての連携が取れない状況が起きている。例えば、マニュアルの担当は製造部門であるが、その品質に対する苦情・要望はサービス部門のコールセンタに来るので、直接的なフィードバックがかかりにくい。このためにマニュアルの品質向上がほとんど進まないと言う事態が発生してしまうのである。こうした原因は、各々の顧客サービス活動が自然発生的に行なわれてきた事によるが、これらを統合的かつ戦略的に実施すべき理由は以下の通りである。

1、 顧客サービスの品質と効率を大幅に向上し、「顧客の信頼=リピート顧客」を確保する事で経営に直接貢献する。

2、 事業領域の多様化と顧客接点の多様化が進む状況では、事業部毎に分割された顧客サービスを再統合する事により、「知識と情報」を集中して一貫性のあるサービスを提供し、上記の「品質と効率の向上」を達成する。(「顧客の声は宝」であり、分散しては対応できない。)

3、 顧客サービスの一貫性を保ち品質を向上するには、専門家集団(品質確認や情報分析の専門家等)を育成すると共にITを駆使して効率化を推進する必要があり、こうした人材の育成と確保が経営戦略としての顧客サービス活動を実現する。

図2-6(顧客サービス戦略本部)に、顧客サービス戦略本部の活動構想を示す。この活動は全ての事業分野に渡る顧客サービスを統合的にしかも一貫性を持って実施するものであり、その活動対象は「顧客」、「営業・フィールドサービス」、「企画・開発・製造」の3つに大きく区分される。

(1) 顧客サポート
顧客との直接窓口であるコールセンタ、メールコンタクトセンタ、修理センタ等を、統合してマネジメントし、顧客対応のレベルアップと効率化を推進すると共に、マニュアルや各種情報提供サービスの充実を行なう。顧客情報を一元管理すると同時に、満足度調査も合わせて実施し、顧客からのフィードバックを迅速にしかも包括的に実施する。

(2) 営業・フィールドサービスのサポート
営業活動を支援するために、顧客情報の分析結果を提供すると同時に、様々な問合せ(競合比較、関連する商品情報の提供等)への対応を実施する。また、サービスマンへは、最近の故障状況の分析結果、修理マニュアルの提供及び問合せ対応等を実施する。

(3) 商品企画・開発・製造のサポート
商品企画活動を支援する上で、顧客情報やWeb風評等の分析結果を提供する。 また、開発・製造部門へは、専門的な知識を要する品質確認及び評価の面で、サポートを実施する。

以上の活動の基盤を成すのが「顧客情報の分析」であり、多面的に分析された結果が、全社の各部門に提供・活用されると共に、当本部内に知識・ノウハウとして蓄積されてゆく事が、知的資産の充実を実現するのである。当然ながら、こうした情報の収集と分析にはIT技術が不可欠であり、データマイニング・テキストマイニングを駆使できる専門家集団の育成が必須となってゆく。 既に大手企業では、顧客への対応窓口をコールセンタとして統合した企業が大部分を占める状況となっており、CTI(Computer Telephony Integration)の導入により、大量の「顧客の声」が蓄積されている。今後の大きな課題はこうした情報を如何に有効かつ戦略的に活用するかであり、その有力な視点の一つが「顧客サービス」を企業戦略のトップポリシーとして位置付けてゆく新戦略であり、ここで紹介した「顧客サービス戦略本部構想」である。

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(2019.05.08 公開)

本コラムは、2002年リックテレコム社出版 石井哲著作「テキストマイニング活用法 顧客志向経営を実現する」から引用しています。
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