テキストマイニングの手法

テキストマイニングによる知識発見の支援

まず、実務で活用する上で、避けて通れないのが、「テキストマイニングはどんな成果を出してくれるのか?」と言う問いに答える事である。多くの経営者は、テキストマイニングが顧客情報と言う宝の山から、すぐにでも儲かるネタを掘り出してくれる事を期待する傾向が強いが、現実にその様な事は決してないし、できるだけ初めの内にそうした無謀な期待は打ち壊しておく事が望ましい。ただし、本質的な問題として、実務において「テキストマイニングが発見すべき知識とは、一体何なのか?」と言う点については、明確にしておく必要があるだろう。
 通常、新たなユーザに対して、テキストマイニングのトレーニングを実施する際には、まず半日かけてシステムの機能及び取扱い説明を行なった後、次の一日間で自分の課題に取組んでもらい、その際のQ&Aをサポートする事で、実務に近い状況での分析作業について習熟する事を狙いとしている。ここで、敢えて自分の課題に取組む理由には、次の4点がある。

1.自分の課題でなければ、真剣に分類する必然性がなく、適当な所で妥協してしまう。また、分析対象となるテキストの内容と実業務に精通していなければ、何を課題として設定すべきかが判断できない。

2.分類する際に最も重要なのは、分析する上での「オリジナルな視点」を持つ事であり、これをテキストマイニングでどう実現できるのか?と言う課題が明確にならないと、トレーニングにならない。

3.上記の「オリジナルな視点」を発見する事も、トレーニングの重要な課題である。勿論、視点は一つではないし、一連の分析の後に判明する場合も多い。

4.実務での課題をこなせば、受講者に自信がつく。

 つまり、テキストマイニングにおいては、まず「分類する際の視点=分類の軸=分類時の意図」(表現は異なるが、いずれも同じ意味であり、どの様に分類するかを見定める事を言う。)を発見する事を支援し、次にその視点を分析プロセスに素早くかつ簡単に反映させる事が極めて重要であり、こうした分析者の判断の支援と視点の反映をスムーズに実現する必要がある事から、様々なビジュアル表示や判り易いインターフェースがキーファクターとなるのである。この知識発見の支援フローを図4-1に示す。(図4-1:知識発見の支援) この意味で、テキストマイニングが生み出す知識とは、次の2点であり、これらの知識が具体的な実務上の成果(即ち、実際の対策案や実行施策による経済効果)を生み出してゆくのである。

1.新たな分類の視点
2.上記に基づく分析結果

つまり、新たな分類視点の発掘そのものが知識であり、同時にその視点による分析結果も合わせて、活動成果として蓄積されてゆく事により、新たな戦略や改善策が次々と企画・実行されて、具体的な成果がもたらされるものと考えられる。これまでの経験では、こうした新たな視点の発掘の価値を理解し、既に同種の活動を実施している部門での導入は、極めてスムーズであるが、この種の文化を持たない場合には、担当部門が如何に熱心であっても、トップの理解を得るために時間ばかりが費やされてゆく事が多い。全般的に見て、各業界トップの企業には、この文化が末端まで行き渡っているが、後追い戦略の企業では、新たな視点はトップ企業が見つけてくれると考えているのではないかと邪推してしまう様な状況である。既に第2章-2-2で述べた様に、「向上意欲のある企業しか実現できないものであり、やる気の無い企業を改善するツールではない。」のである。 また、この様な新しい視点を発掘する際のチェックポイントについて、一般的に適用可能な項目を、同図に示す。通常、まずチェックすべきは、分析結果の内容の重要性と量であり、次にその時間変化となるのが一般的である。また、属性に関してもチェックポイントほぼ同様であり、分析結果との関連性で検討して行く事になる。

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(2019.05.08 公開)

本コラムは、2002年リックテレコム社出版 石井哲著作「テキストマイニング活用法 顧客志向経営を実現する」から引用しています。
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